3月のライオン 第16巻 羽海野チカ著

3月のライオン 16 (ヤングアニマルコミックス)

15巻目まではブックオフで購入して読みましたが、最新刊は遂に新刊として購入しました。
2007年7月の連載開始から14年を経る間に、テーマとなった将棋界に藤井聡太という天才棋士が出現し、19歳にして3冠を達成するという「事実は小説より奇なり」を地で行く展開に世間は驚愕しています。
3月のライオン」の主人公である桐山零は15歳でプロ棋士となり、作中では史上5人目となる中学生プロ棋士の誕生という、連載当時としてはかなり攻めた設定だったのですが、藤井聡太という実在の天才棋士を前にしては、その存在感も薄くなってしまいます。しかしながら彼の物語の魅力は、その輝きを失うことはありません。彼は元々単なる将棋界のスーパースターとして描かれていたのではなく、年齢相応の悩める少年として、努力の成果として得られた将棋の才能を武器として、事情ある一人暮らしを成立させていましたが、縁あって係りを持つこととなった、下町で和菓子屋さんを営む川本家の三姉妹とおじいちゃんとの間に生まれた、実にハートフルな触れ合いをメインにして描かれています。そんな環境の中で主人公である零と、彼と何らかの関係を持った登場人物が人間的に成長していく模様が、時間をかけて丁寧に描かれていきます。それは天才棋士藤井聡太と比較しても、何ら遜色のない魅力に溢れているのです。