スチームボーイ

春先に見た「イノセンス」と較べると、日本製アニメとして見ていてホッとすることのできる絵作りのアニメでした。CGの素晴らしさよりも(もちろんCGも使用されていますが)、セルアニメの楽しさが感じられたのがその理由でしょうか。和製セルアニメとしての頂点に立つような映像の美しさ、緻密さ、楽しさの調和の取れた作画でしたね。
残念なのは個人的な好みではあるのですが、主なキャラクターに声優が声を当てていなかったことでしょうか。台詞を聞いていても微妙な違和感があるのです。宮崎アニメも同様に声優を起用しませんが、宮崎アニメの場合は最初の10分ほどで慣れてしまいます。スチームボーイでは早いキャラでも30分、遅いものは最後まで違和感が取れることはありませんでした。
そして、脚本と演出にも一言。超高圧の蒸気を閉じ込めたスチームボールというアイデアと、産業革命期のイギリスという舞台設定は素晴らしいのですが、カットのひとつひとつがワンタイミング長いのです。そのため、せっかく映像で作り上げた「間」が流れてしまう印象がありました。前半の鉄道を使った追い駆けっこのシーンが素晴らしかっただけに、その他のシーンでせっかくの素晴らしい作画が生かされていなかったのが惜しまれます。
DVD化する際に完全版とかディレクターズカット版と称して、長時間バージョンが作られることが多いのですが、是非余計な部分をカットしたバージョンを作っていただきたいと思います。