漫画原稿流出事件

今日付けの毎日新聞朝刊に、事件のことが特集記事として載りました。
『「口約束で執筆」慣習に落とし穴』
というタイトルで、漫画家・出版社の原稿管理の甘さが事件の背景にあるという厳しい視点での記事作りではありましたが、「原稿の所有権はもちろん漫画家にある」とリード文にとり上げて貰ったことは当事者にとって心強いものがあると思います。
新しい事実はあまりなかったようですが、気になる点がいくつかありましたのでピックアップしてみます。
その1
まんだらけが買取った原稿は約3000枚と書かれていましたが、さくら出版がらみで行方不明になっている原稿は8000枚以上にのぼります。
残りの5000枚は何処にという疑問が湧きますが、弘兼先生の原稿2000枚に300万の値段が付けられていたと書かれていますし、守る会HPの流出原稿リストによれば、漫画家本人または第三者により、まんだらけの店頭、HP、カタログなどによって販売されていることが確認されたものだけでも4000枚弱となっています。
3000枚という数字は毎日新聞の取材に対してまんだらけ側が申告した数字でしょうが、なぜ過小に申告しなければならなかったのでしょうか。
その2
漫画家に対して原稿管理の甘さを指摘しているのは、マスコミとして取材の結果であり当然の指摘であると思います。
漫画家側もこの点については反省し改善の方法を探っています。
一方で、流出した原稿が市場に流れる過程についての考察がほとんどなされていないのが残念です。
漫画家が原稿管理を厳しくしても、現在の印刷システムの元では、雑誌やコミックス発行の際に原稿は出版社に渡さなければなりません。
漫画家の管理下から離れた原稿が不正に流出することを完全に防止することは不可能です。
それだけに、不正流出から流通に至るまでの過程についての取材・考察も加えることも必要だったのではないでしょうか。
出版社、編集プロダクション、印刷所、古書店のいずれにも、漫画原稿の不正流出・流通に関わりをもつ可能性が存在するのですから。
その3
まんだらけ古川社長の「歩み寄る覚悟はある」とのコメントは何を意味するのでしょうか。
「歩み寄る」というのは分かりますが、「覚悟」という表現は様々な含みを持った表現のような気がします。
また、「漫画家の怠慢。彼らだけを甘やかしていいのか」というコメントもありました。
これについて私は、まんだらけを甘やかしてもいいのかという気持ちがあります。
まんだらけの古川社長は決して自らは使用しませんが、まんだらけの今回の行動を容認・擁護する発言をされている方々が金科玉条のごとく使いたがる言葉に「善意の第三者」という言葉があります。
この言葉は法律用語で、見た目の意味とは違う使い方をされるものです。
あすの日記ではこの「善意の第三者」について書いてみようと思っています。
とにかく、今回の事件が新聞にあれだけのスペースをとって報道されたことに大きな意味があります。
読売新聞も担当の記者が決まっているということですので、報道が続いてくれることに期待したいと思います。