社内報に落ちぶれてしまった読売社説

読売新聞を購読していないので「関西アレ野球ニュース」さんを通じて知ったことですが、
http://kos.homedns.org/~uzu/
18日付読売新聞社説は凄い内容になっていました。
http://www.yomiuri.co.jp/editorial/news/20040917ig90.htm
「ファン裏切る“億万長者”のスト」 と題されたそれは、まるで社内のTOP(つまりオーナー側)にしか目を向けていないかのような内容に仕上がっていたのです。

プロ野球選手会は「スト決行」を決めた。プロ野球史上、初めての事態だ。試合を楽しみにしていたファンへの裏切り行為である。

ストライキはある意味ファンに対する裏切り行為といえないこともないでしょう。ただ、ファンの約8割がストに理解を示していることを無視したうえ、この文の主語は意図的に「選手会」にされています。選手会が自分勝手にストライキを決めたのではなく、経営側と協議した結果が合意に至らなかったため、苦渋の決断としてストを選ばざるを得なかったのです。一方的に選手会を悪役に仕立て上げようという意図が見え見えの文章には呆れてしまいます。

中立的立場にいたコミッショナーが、最終局面で出した調停案も、結果的に選手会に踏みにじられた。コミッショナーは「ストに入れば球団がさらに疲弊し、解散、倒産に至ることもあり得る」と警告していた。

中立的立場を装ってコミッショナーとして期待される仕事を一切してこなかった根来氏が、調停案という名を冠しながらも、新鮮味の全くない単に現状を把握したというだけのものを、自分の辞任を脅し文句に提示しただけで、それを選手会が踏みにじったなどとミスリードを促すような文章に仕上げるとは片腹痛い。根来氏は辞任を賭して調停案を提示したような報道がされていますが、17日には消費者機構日本の新会長に就任が決まっており(http://www.nikkei.co.jp/news/past/honbun.cfm?i=AT1G1702F%2017092004&g=K1&d=20040917)、次の天下り先が決まった上で大層ご立派な意見を掲げているだけにすぎません。

今後、ストの違法性が議論されることになるだろう。試合の中止で経営側は相当の損失を被る。経営側も、当然賠償請求を検討している。

損失をこうむるのは経営者側だけではありません。もちろん選手側の賃金もカットされますし、個人記録の達成が困難になった選手もいるでしょう。

ずるずる続けば一九九四年の米大リーグストの二の舞いだ。高額年俸の抑制制度導入を図る経営側に選手側が反発し、ストは二百三十二日に及んだ。多くのファンが離れ、翌年、リストラや年俸カットが選手たちを待ち受けていた。

94年の大リーグのストとは、ストの理由も戦術も全く違っています。一緒にして語るべきものではありません。
「ファンのために」という言葉を都合のいいように使用していますが、130万人を超える署名や合併に直面している近鉄オリックスファンの声を一顧だにしなかったのは経営者側ではなかったでしょうか。
自分達の会長の国会答弁を生中継しようとしなかったNHKを批評して1週間もたたないうちに、自社の上層部が経営に関わっているプロ野球界の問題について、単なる社内報の提灯記事にまで落ちぶれてしまった大読売新聞の社説に失望感を抱くしかありません。
と書いていたら今日(19日)付けの社説がこれです。
http://www.yomiuri.co.jp/editorial/news/20040918ig90.htm
「何が選手たちの真の望みなのか」 って、経営側の言い訳を一生懸命に肩代わりする姿。まさしく社内報そのものです。

※追記
調べてみたら、以前の読売社説も凄かった。
「スト回避への糸口はあるはずだ」(9月9日)
http://www.yomiuri.co.jp/editorial/news/20040908ig90.htm

「超高額所得者たちの労働組合」(9月10日)
http://www.yomiuri.co.jp/editorial/news/20040909ig91.htm

「安心して週末のゲームを見たい」(9月12日)
http://www.yomiuri.co.jp/editorial/news/20040911ig91.htm

※追記2
消費者機構日本」会長 根来泰周・前公正取引委員会委員長
さすがに職務能力が問われる怖れがあるのか、プロフェッショナル野球機構コミッショナーとは書けなかったようです。