原稿流出再び

id:copyrightさんの『2006-03-12 - Copy & Copyright Diary』からトラックバックを頂いて知ったのですが、小説家の村上春樹氏の直筆原稿が古書店に大量流出してしまったとのこと。流出の経緯などを見ると2003年に起こった漫画原稿流出事件と非常に似通っているようです。今回の流出元となった元編集者が在籍していた中央公論新社の見解を見ると

中央公論新社の話 「今回の問題は村上氏のご指摘で把握し、調査いたしました。関係者が死亡していることもあり、判然としないところもありましたが、調査結果は村上氏に説明いたしました。生原稿の所有権については様々なケースがあり、いちがいには言えませんが、村上氏のケースについては遺憾と思っております。」(http://www.asahi.com/national/update/0310/TKY200603090524.htmlより引用)

と、

中央公論新社のコメント 「村上氏にはご迷惑をおかけし、申し訳ないと思っています。流出過程はすでに調査しました。関係者が死亡しており、判然としないところもありましたが、調査結果は村上氏に説明しました。今後については、村上氏と協議しながら、誠意を持って対処します。」(http://www.mainichi-msn.co.jp/today/news/20060310k0000m040171000c.htmlより引用)

ということで、asahi.com毎日インタラクティブではニュアンスがかなり違うのですが、asahi.comによれば漫画と同様に出版社は原稿の所有権についての判断には及び腰なようです。どう考えても「遺憾」ですむような話ではないと思うのですが・・・。出版社の考え方が毎日インタラクティブが報じた内容であることを願っています。
幸いにして漫画の分野では渡辺やよい氏の努力によって、原稿の所有権が漫画家にあることが判決として勝ち取られています。村上氏の場合もきっちりと原稿の所有権の確立の機会ととらえて、出版社に妥協することのない行動をとってもらいたいものです。
このような被害にあった漫画家や作家が個人的に被害を回復したところで同じことは必ず繰り返されます。原稿の所有権については出版社との間の契約、あるいは漫画原稿流出事件の結末のように裁判による判例を重ねて確立していくことしかないのではないでしょうか。