わたしたちの教科書 最終回

法廷では原告側の証人として朋美(谷村美月)は、小学2年生の時に転校してきた明日香(志田未来)との思い出を語っていく。すぐに仲良くなった2人ですが、朋美が陸(冨浦智嗣)を好きになると2人の間に距離が生れる。ところが陸とのデート中、車の中で援助交際をしていた中年男を陸の父親とは知らずに気持ち悪いと行ったことから、陸を中心としたいじめの対象となってしまう。それでもピアノを弾くという逃げ道のあった朋美でしたが、誰かに投げられたモップによって指を骨折し絶望した彼女は自殺しようとする。それを止めて「私が代わりにいじめられる」と身代わりになったのが明日香でした。朋美は明日香が教室から転落した時の状況についても証言します。教室から飛び降りようとしたのは朋美で、明日香は彼女を必死で説得して翻意させたのに、窓枠から教室に戻る際に足を滑らせてしまったのが転落死の原因でした。
一方、中学校では加地をナイフで刺した雨木副校長(風吹ジュン)の息子・音也(五十嵐隼士)が教務室を占拠し、陸を天に代わって罰するために殺めようとしますが、加地や雨木によって阻止されます。
1年後、裁判は判決の日を迎え原告の訴えは一部を除いて棄却されます。いじめの存在は明らかにされたものの、転落死の原因はいじめではなかったのですから仕方のないことでしょう。もちろん珠子(菅野美穂)の目的はそこになかったのですから問題はありません。中学校でもいじめがなくなることはありませんが、いじめの存在そのものを否定することなく、教師たちもいじめに向き合うようになっていました。
法廷での証言後、行方が分からなくなっていた朋美の居場所を、明日香の墓で出会った雨木から聞いた珠子は、完全に自分の殻に閉じこもってしまっている朋美と一緒に彼女達の秘密の隠れ場を訪れる。秘密の隠れ場であった廃ビルの壁には明日香による明日香への自殺を考えようとする気持ちを否定するポジティブなメッセージが残されていました。それを見つめる珠子と朋美の後ろ姿に救いが見られたような気がします。
雨木の息子のエピソードは非常にイレギュラーなもので、雨木の頑なないじめの存在の否定の理由付けとはなるのでしょうが、はたしてエピソードとしては必要のあるものだったのか疑問です。教師の意識改革については、彼の教務室占拠がなくとも緩やかながら進展していましたしね。エピソード自体も竜頭蛇尾に終わってしまったという印象が否めません。それよりも証言台に立った朋美の証言の緊迫感のほうが見事でした。これは谷村美月を誉めるしかないでしょう。安易なハッピーエンドに終わらせずに最後まで重い空気を引っ張るような演出は見事でした。