Negiccoニューアルバム「ティー・フォー・スリー」

ティー・フォー・スリー
実は全曲試聴トレイラー映像では今ひとつこのアルバムの凄さがわかりませんでした。ピックアップされていたパートが、その曲のコアな部分ではなく、映像に合わせる形でパートが選ばれていたからかもしれません。タワレコオンラインから届いたアルバムを通して聴くと、最初の印象は良い方向に裏切られることとなりました。
NegiccoはTパレ加入以来3枚のオリジナルアルバムを発表していますが、どの作品も水準が高く、評価を得ることができたのは、音楽プロデューサーにconnieさんを据えたチームNegiccoでの作品であったから。そして、当時も普通の会社員であったconnieさんを、Negiccoの音楽プロデューサーとして迎えたTパレ嶺脇社長の慧眼が今に至るNegiccoの着実な快進撃を生んだのでしょう。
今回のアルバムもconnieさんのプロデュースのもと、選び抜かれた作詞・作曲・編曲の担い手の一人ひとりが素晴らしい楽曲を提供し、止むことなく成長続けてきたNegiccoの歌声がその上に乗っかることによって至高の音楽が創造されたのです。
もちろん前作の「Rice & Snow」も素晴らしい作品でしたし、実験的というか冒険的な曲にもチャレンジしたとんがった作品でもありました。一方で今回のアルバムはまるでトータルコンセプトがしっかりと存在しているかのような調和感が感じられ、既発のシングル曲も全く違和感なくアルバムに溶け込んでいました。というわけで前作以上の運転時の無限ループが確実となりました。
もちろん、細かく聴き込んでいけば、わずかな音程の揺らぎやピッチの乱れを聴くことは出来ると思います。それはスタジオ作業での後処理で修正をかけてはいない証明でもあります。Negiccoの生声の魅力を優先させているわけで、森林浴のようなマイナスイオン効果を持つ彼女たちそれぞれの個性ある歌声、ユニゾン、ハーモニーなどを大切にした結果でしょう。
ところで、アルバムの収録曲は完成形ではありません。アルバムでも既にあるがままのNegiccoの作品ではありますが、ヴォーカルユニットとしての作品からライブを経てダンスヴォーカルユニットとしての作品により進化を遂げるのがNegiccoの作品が本来持っている姿です。既に、リリイベでのミニライブでその片鱗の一部を見せ、聴かせてくれているようですが、曲が成長していく過程を楽しめるのが、Negiccoの現場の多幸感を生んでいる一因かもしれません。
私は個別の曲を詳しく語るような音楽的素養には欠けていますが、特に好みの曲を挙げさせていただくならば、NegiccoのDNAを忘れさせない「Good Night ねぎスープ」。Negiccoの大人っぽいウィスパーボイスがたまらない「江南宵歌」。よりスローにしっとりとした「おやすみ」でしょうか。もちろん他の曲も甲乙付け難い曲が存在感を持って流れてきますので、先程も書いたように無限ループ間違い無しのアルバムなのです。
あと心配なのはこのアルバムのプロモーション戦略だけです。いかんなく実力を発揮してくれたNegiccoと製作陣に対し、Tパレはリリースイベントとプロモーションに関してはあまり信頼がありません。今回のアルバムは今まで少なかった若い女性層をファンに取り入れることのできる曲が集められています。ここで、女性ファンを獲得できなければ、このアルバムの意義が半減してしまいますので、リリース週に限定することなく女性ファンの新規獲得に向けて様々な手法を試みて欲しいのです。そうすることで未来に日本武道館が見えてくるのだと思うのです。
最後に、このアルバムの評価とは別になりますが、作詞・作曲・編曲の担い手の方々との縁が将来的に繋がっていくのがNegiccoの素晴らしさだと思います。この夏のNEGi FESでの堂島孝平さん、土岐麻子さんのゲスト出演でも明らかです。もちろん田島貴男さんとの関係などはその最たるモノですね。ファンの音楽性の広がりにも繋がっていくこの関係性は大事にしていってほしいと思います。