漫画原稿流出事件

昨日の続きに入る前に、
唐沢俊一さんと村崎百郎さんによる「社会派くんがゆく」vol.019で、先月に続いて事件のことを取り上げています。
http://www.shakaihakun.com/data/index.html
評論家側からのこの事件のアプローチとしては、質量ともに最も充実した内容となっています。
他の評論家の皆さんは何をしていますか?
この事件との関わりを避けた上で、今後も漫画について語ろうなどとは思わないで下さいね。
そんな方が何を語ろうが、漫画そのものについての愛が存在しないことは明らかですから。

ということで、昨日の続きです。
昨日は、理想論ではありますが、古書店に求められる漫画原稿を扱う際の行動について書いてみました。
今日は、実際にまんだらけがとった行動について書いてみます。(推察も含みます)

1.漫画原稿が持ち込まれた際の対応について事前に十分な検討を行っているが、あくまでも商売としての検討であり、漫画原稿の散逸と言う問題については何も考慮されていない。
 これは社長の部屋の目安箱における書き込みでも明らかですが、原稿の流出については通常のルートではあり得ない(何十年も前の出版社からの読者プレゼントや、漫画家自身による売込みを除く)と認識されています。したがって、グレーなもので商売が可能か十分な検討を事前に行い、法的には漫画家に十分対抗できると言う自信を持っているのでしょう。

2.実際に漫画原稿が持ち込まれた場合、形式的な人物確認は行うでしょうが、査定の中心はあくまで漫画原稿であり、いくらで買って、どのくらいの値付けで売れるものかという査定が行われるだけ。
 だからこそ、以前のマンガジャパンとの覚書などは、面倒な作業という認識しかないため、真剣に連絡・確認をとろうなどとは考えない。そして、一回でも連絡が取れなかったことを理由にして、覚書の内容を一方的に反故にするわけです。そこには、漫画文化の保護や育成などの理念のかけらも存在しません。商売としては当然かもしれませんが、私には納得できない行動です。

3.販売している漫画原稿について、何らかの問題点が指摘がされた場合も、法的には十分検討を加えているため、自信をもって対応する。
 購入希望者が原稿の入手ルートについて不安を持っている場合は、原稿が通常のルートで流れることなどありえないことを説明した上で、その灰色な部分は古川社長が全部引き受けて販売しているのだと主張し、それが気に入らなければ売らないよと高飛車な態度で応じたり、漫画家本人が自分の意図しない原稿流出であるから売らないでと申し出ても、警察に被害届を受理してもらってからいらっしゃいと軽くいなし、原稿は売値で購入していただかないと、と本来の原稿所有者の神経を逆なでするようなことを平気で言うわけです。ここにも、漫画原稿の意図せざる散逸に対する危機感などはかけらもありません。

4.どうやら扱った漫画原稿が犯罪による被害にあったものであることが明らかになった後も、法的に正当な取引と見なされそうだということを楯にして、被害者側の立場を慮ろうとしない。
 残念ながら、既に販売されてしまった原稿についても、その回収に関して全く協力的な行動をとろうとしてはいないようで、被害者である「漫画原稿を守る会」が独自にチラシなどによる購入者への呼びかけを行っている状況です。購入者の個人情報を簡単に第3者に提供することは出来ないというまんだらけ側の主張は間違ってはいないかもしれませんが、ネット・オークションで販売した相手についてまんだらけ側から連絡をとって、事情を説明した上で返品をお願いするなどという行動をとってあげようなどとは考えもしていないようです。ここにも漫画原稿の散逸に対する危機感は全くありません。

以上のように、まんだらけがとっている行動は、漫画文化に対する冒涜にほかなりません。法的に問題がないから良いということではないのです。