漫画原稿流出事件

今日は少々事件から外れた話をしてみたいと思います。
知り合いの古書店(漫画メイン)のお話です。
先日、廃品回収業者から書籍の持ち込みがありました。
純文学系の全集ものを中心にかなり古い小説の単行本が段ボール3箱程度だったため、そんなに高くは買取ることは出来なかったそうです。
ところが、買取った本をひとつひとつチェックしていたところ、著者本人が持ち主に対して書き込んだと思われる直筆の献辞の入った本が何冊か見つかりました。
買取の際には、古くて値段もさほどつけられない全集物ということで、著者名とタイトル、冊数ぐらいしかチェックしていなかったので見逃していたわけです。
また、1冊だけですが、ある芥川賞作家の受賞作の箱入り限定単行本も見つかりました。
ちょうど、そんなところに私も顔を出したものですから、こういった限定本はどのくらいの値をつければ良いのか、などと相談を受けたのですが、店主も献辞のことを気にされていて、いわくがあるかもしれないので、しばらくは店に並べずにおき、持ち込んだ廃品回収業者が顔を出したら確認してみようということになりました。
確認が終わるまでは売り物にしないということで、慎重な対応を選択したわけです。
結局、その業者とは連絡が取れなかったのですが、数日後に初老の男性が古書店を訪れました。
話を聞いてみると、奥さんが間違って蔵書を廃品回収に出してしまったとのこと。
一生懸命、廃品回収業者を探して、声をかけて歩くうちに持ち込んだ廃品回収業者に運良く出会い、古書店の名前を教えてもらったそうで、何とか返してもらえないものだろうかとお願いされたそうです。
もちろん、古書店の店主は「買取価格」は負担してもらいますがと言うことで返却に応じました。
今回の原稿流出事件のことは私を通じて知っていましたから、「まんだらけ」のようにはなりたくないということで対応されたのです。
同じ古書店でも随分と対応が違うように思います。
やはり業者としての「誇り」と「矜持」の差ではないでしょうか。