BECK

先週末から公開された映画版「BECK」を観てきました。公開3日目でメンズデーの割引対象日なのに観客の数はかなり少ない印象。チケット購入で並んでいる間、他の人がどの映画のチケットを購入するかと注目していると、「はなみずき」のチケットを買う人の方が多かったように見えました。映画の方はキャスティングとサウンド・演奏にストレスを感じさせなかったのは、音楽ものの漫画を原作としている映画として上手くいった証拠でしょう。「BECK」の場合、漫画の映像化というよりもサウンド化というべきで、それがどれだけ上手く表現できるかで映画の出来が決まります。「のだめ」のように演奏しているのがクラシック音楽であれば、曲そのものは現実に存在しているので、映画の制作者側と観客の間に共通認識されますが、「BECK」のようにオリジナルな楽曲を演奏するバンドが主人公となると、漫画に描かれたバンドが演奏する楽曲のイメージはそれぞれの読者の脳内で構築されることとなり、共通認識として存在することが困難です。そこで原作にファンが映画を見るとストレスを感じてしまうことになるのですが、それがなかったということだけでホッとしました。コユキのヴォーカルの音なし演出については賛否両論あると思いますが、原作で表現されているコユキのヴォーカルは読者の脳内で神格化されていて、残念ながらどれほど上手い声を聴かせられても満足できるものではありません。それならば音を消して映画の鑑賞者の脳内で独自に構築される声に任せた方が、ストレスを感じさせずに映画を見てもらうことが出来るのですから、選択肢としてはこれしかなかったのではないかと思います。もちろん音なしでヴォーカルを表現する演出の仕方にはもう少し工夫が必要だったかもしれませんが、少なくとも私は良いライブを聴かせてもらったなという気分にさせられたので満足しています。