原作の存在するドラマ・映画制作で留意すべきことについて~芦原妃名子先生を悼んで~ 8

セクシー田中さん(1) (フラワーコミックスα)

ここまでほぼ一週間をかけて漫画原作のドラマ化に関して、芦原妃名子先生原作の「セクシー田中さん」のトラブルと悲しい結末について整理し、まとめてきました。そのためお休みしていたレギュラー記事も更新分が貯まってきましたので、一旦まとめとしてこの書き込みのテーマでもある、今後、原作の存在するドラマ・映画制作で留意すべきことについて書いておきたいと思います。
漫画家さんが自分の作品をテレビドラマ・映画の原作として使用されることを許可する際に、きちんと形になった契約を交わすことが必要です。芦原先生の「セクシー田中さん」の一連のトラブルを振り返ると、芦原先生の「原作はそのままで、改変を加えないでほしい」という意向が小学館を通して日本テレビへ伝えられたとされていますが、そこまでは間違いないと信じたとしても、その意向に対して日本テレビからどのような回答があったのか明らかにはされていません。芦原先生の意向が日本テレビに伝えられるだけでなく、それが脚本・ドラマ制作に反映されてないからこそ、初回から毎回、大きく改変された脚本の修正をせざるを得ず、この段階できちんとした形での契約の存在を疑問視してしまうのです。契約の内容を基本としたドラマの制作。および原作者の代理人としての役割を持つ出版社が忖度なしにその役割を果たすことが大切であり、これからのドラマ制作に生かしてもらいたいものです。
さらに「セクシー田中さん」のドラマ化にあたっては、芦原先生と脚本家およびプロデューサーなどの制作スタッフと、打ち合わせどころか顔合わせすら行っていないことが明らかになっていますが、編集者同席で構わないというか必須で、お互いの意思を伝えあうことが出来る場を設けることが必要です。このぐらいの面倒を抱え込む余裕が無ければ原作物のドラマ化など企画すべきではありません。
最後にこのドラマの第9話、第10話は漫画にもなっていない部分であるだけに、芦原先生自らが脚本を書くという最悪の落としどころになっていました。しかしながら芦原先生は脚本を書くという経験がなく、どうしても本人の満足する脚本とならなかった悔しさがブログの書き込みに滲み出ていました。アニメでは以前は無理やりづけジュールを守るために作画崩壊など起こしていましたが、最近は作品の出来栄えを保つために、放送を延期することも増えてきましたが、ドラマでもこの考え方が普及すると良いと思うのですが、スポンサーの立場もアニメとドラマで違ってきますので難しいかもしれませんね。
ここまで結論めいたことを書いてきましたが、テレビ局側も出版社側も今回のトラブルを繰り返すことのないよう、速やかに見直し・対策をして、原作に負けないレベルのドラマを制作してほしいものです。
そこでオマケとして過去の漫画のドラマ化におけるトラブルについて挙げておきます。
1997年 「いいひと。」ドラマ化における漫画家高橋しん先生とのトラブル。

五年半ありがとうございました。

2008年 「おせん」ドラマ化におけるきくち正太先生とのトラブル。

eigachannel.jp

2012年 「海猿」映画化における漫画家佐藤秀峰先生とのトラブル。

note.com

2012年 「しろくまカフェ」アニメ化における漫画家ヒガアロハ先生とのトラブル。

上記のうち「いいひと。」「海猿」「しろくまカフェ」が小学館発行の雑誌に掲載された漫画です。小学館にはぜひ漫画のドラマ化に際して漫画家最優先主義を貫いてほしいものです。
次のテレビドラマは4月スタートの春ドラマになると思うのですが、とても気になる報道がありました。

www.jprime.jp

※制作中止になったそうです。

日本テレビ小学館には「セクシー田中さん」の制作体制の検証・見直し・反省・対策のうえで、新しいドラマ制作に臨んでほしいですし、他のテレビ局、出版社も今回の件を他山の石として真摯にドラマ制作にあたってほしいと思います。
私と考え方が近しい報道がありましたので紹介して終わりといたします。

toyokeizai.net

※その後、日本テレビが検証・見直しなどを行う旨発表がありましたが、2/24現在結果報告はありません。

 

2/24一部修正・追加しました。