原作の存在するドラマ・映画制作で留意すべきことについて ~芦原妃名子先生を悼んで~2

セクシー田中さん(2) (フラワーコミックスα)

先回、芦原先生が亡くなってしまったこの問題は、ドラマ制作に関わる全ての人の情報伝達の流れにあるものと考えますと書きました。「セクシー田中さん」がドラマ化される過程で脚本家の方とお会いすることはなかったと書かれていましたが、漫画原作のドラマが制作される過程に携わる関係者の多さを考えれば当然でしょう。
試しに芦原先生から脚本家までの情報伝達の流れを考えてみましょう。芦原先生の意思はまず担当編集者を通して小学館へ伝えられますが、小学館は出版社としてかなりの規模を持っていますし、「セクシー田中さん」の他にもドラマ化される複数の漫画などの出版物を管理していますので、メディアとの窓口となる部門があるはずです。小学館のサイトをチェックするとクロスメディア事業部がそれにあたる感じです。「社外にて担当作品の製作委員会出席」という業務内容が紹介されていましたのでこの事業部がドラマ化の窓口になっていて、個別の作品の担当者がいるようです。

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つまり漫画家の担当編集者とドラマ化の担当者は部門も違えば人も違うということです。そしてドラマ化の担当者から情報が伝えられるテレビ側の窓口はドラマの制作委員会となり、そこの対出版社担当者ということになるのです。ドラマの制作委員会には日本テレビ側からはチーフプロデューサーを始めとして制作管理を行う者が参加し、実際のドラマ制作を担当する会社である制作会社(今回は株式会社日テレ アックスオン

www.ax-on.co.jp

小学館側の担当者が参加していたはずで、ここに芦原先生の意思が届けられることになるのですが、脚本家が最初から参加しているかどうかはわかりません。芦原先生の意思が脚本家にはこの製作委員会で伝えられますが、脚本家が参加していない場合には、政策委員会の担当者を通じて芦原先生の意思が伝えられるということになるのです。つまり芦原さんの意思に関する情報伝達は見事なばかりの伝言ゲームになっていたのです。芦原さんの意思が100%の正確性を持って伝わるとは考えられません。
さらに芦原さんの書き込みにあるように、彼女の要望をすべて受け入れてのドラマ制作であれば、日本テレビ小学館の間にそれを明記した契約書が存在すべきなのですが、芦原さんの逝去にあたって日本テレビが出したコメントが
芦原妃名子さんの訃報に接し、哀悼の意を表するとともに、謹んでお悔やみ申し上げます。日本テレビは映像化の提案に際し、原作代理人である小学館を通じて原作者である芦原さんのご意見をいただきながら脚本制作作業の話し合いを重ね、最終的に許諾をいただけた脚本を決定原稿とし、放送しております。制作にご尽力いただいた芦原さんには感謝しております」
でしたので、小学館側が契約の内容を明らかにして経緯を説明すれば、実態は明らかになると思うのですが、現在のところはその動きは小学館側に見られず。契約書の存在すら芦原さんは目視で確認していないかもしれないのです。これに関しては漫画家と契約に関する闇についての説明も必要になってくるので、次回以降に書いていきたいと思います。