漫画家末次由紀盗作騒動について

騒動から既に1週間が過ぎ、騒ぎも落ち着いてきたようですが、私なりの意見をまとめてみたいと思います。
この盗作というかコピー・トレース問題というのは、漫画原稿流出の問題と同様に、漫画家一人一人の著作権などに対する理解と認識のなさ。それに加えて編集部サイドが漫画家の権利関係に対して漫画家を啓蒙しようとせず、無知のままにいることで良しとしてきている業界特有の問題点を孕んでいるのではないかと考えています。
他の漫画家の作品をコピー・トレースした末次由紀という漫画家の罪・責任は何よりも大きいものがあるでしょう。それを受けてコミックスの回収・連載の中止措置をとった講談社の迅速な動きも当然であったかもしれません。しかしながらこの問題は今回突然降って湧いた問題とは違うようです。アドレスが変わりました。で検証されているように、以前からトレースやストーリーのパクリ疑惑が持ち上がっていたものの、当の漫画家は真摯な対応を行なってきませんでしたし、出版・編集サイドも事実を把握していなかったのか、それに対する対応が出来ていなかったようです。
パクリ騒動についてはエイベックスが「のまねこ」の問題で上手く対処することが出来ずに、大きな痛手をこうむるということがあったばかりです。そこに今回の騒動ですから講談社も慌てたのでしょう。過剰反応とも言えるような無条件全面降伏の対応となってしまったわけです。末次由紀という漫画家も自業自得とはいえ再起不能といってよいダメージをこうむってしまいました。漫画業界全体にとっても大変残念な騒動でしょう。ただ、この前の漫画原稿流出事件の際もそうであったように、これで良しとしてしまってはいけないのではないでしょうか。出版社側も漫画家側も自分達が作り上げてきたコンテンツに関する権利について、法的な問題も含めて業界全体で明文化するぐらいの問題意識を持って行動に移ってもらいたいものです。更には権利関係を含む法律知識に乏しい漫画家への啓蒙にも力を入れて欲しいものです。漫画家が権利関係の法律知識に暗いほうが扱いやすいと考えて、今回のような対症療法を繰り返すばかりであれば、今後も似たような騒動が起こることは確実です。
たけくまメモの10月20日、21日、23日、24日の記事とその記事に対するコメント欄を読むと様々な意見が交わされていて興味深いものがあります。竹熊氏の主張されるマンガ専用フォトライブラリー構想も、漫画原稿流出事件の際に誰かが提唱した、漫画家の原稿を一括保管管理する施設構想と同様に実現の困難性はありますが、業界を良くするためにはあらゆる可能性を検討していくことが大切なのではないでしょうか。それもファンが主導するのではなく、出版社と漫画家が手を取り合って行動することが求められているのです。